ukkaを追いかけた春に思うこと

ukkaの2023年春ツアー、内容の素晴らしい充実ぶりが、ユニットの完成度の高さを物語っている。私は初日の横浜は行けなかったが、行くことのできた仙台、福岡、名古屋、大阪の各公演は個人的に大満足のパフォーマンスであった。

3月5日仙台「それは約束の地の如く」

「仙台公演より、観客の声出し解禁」という運営からのアナウンスに、ファンたちは色めきたった。

ukkaのライブで観客の声出しが可能になるのは、春ツアー仙台が初めてではない。福島で行われたエクストロメという対バンイベントでは「地面や森に向かっての声出しOK」、渋谷での「evolution pop」と題された3マンライブでは全面的に声出しが解禁され、「dot yell live fes 2周年SP」も声出し可能ライブであった。

しかし、ukkaのワンマンライブでの声出し解禁は、コロナ禍以降では初めて。特別なワンマンになるのではないかと、期待に胸を膨らませるファンも多かった。くしくも仙台は、改名以前の桜エビ〜ず時代の2019年ツアーファイナルの地。熱狂的なダブルアンコールで幕を閉じたライブは、未だに語り草となっている。仙台は熱狂が約束された地…そんな思いで仙台にはたくさんのファンが集まっていった。

特別なライブになる…そんな期待は裏切られることなく、熱く、激しく、楽しいライブであった。ライブ序盤に探り探りにコールを行っていたファンたちも、コズミック・フロートで爆発。飛びながら叫ぶファンたちの熱量には、茜空さんも「この曲で思い描いていた光景が見られた」とご満悦のコメントを残すほどだった。ステージの熱さがフロアに伝わり、フロアの熱気がステージをさらに加熱していく。ステージとフロアの好循環は、ファンたちの声援で加速していくのであった。

リンドバーグ」でコロナ禍以降に加入した結城りなさんと葵るりさんの2人の名前をファンが叫ぶ瞬間は、一つのクライマックスであっただろう。2人は、特典会で自分のもとに来てくれた個別のファンからは歓迎を受けていることは感じられていただろう。しかし、全てのファンが特典会で2人を訪れるわけではない。フロアの声が塊となって自分にぶつかってきた時、「新入り」というレッテルから解放されたのではないか。「リンドバーグ」で新しく与えられたパートでを歌う葵るりさん、その歌声からはさまざまな感情が溢れていたように感じられた。

3月15日福岡「待ちわびた思いは爆発へ」

北の仙台から南の博多へ舞台は移る。日陰の空気はヒンヤリしつつも、汗ばむほどの日差しは、春の訪れを感じさせた。しかし、ファンの心理としては、「約束の地の仙台はもう通り過ぎてしまった。博多ではどうなるのだろうか?」というものだったのではないか。

しかし、その心配は杞憂だった。フロア全体のちょうど真ん中あたりにいた地元のファンの人たち(ライブ中のMCで地元の人に手を上げてもらう場面があったために判明)が作り出す熱狂は、さながら爆心地のようだった。爆発する地元のファンたちの炎に煽られるように、フロアの隅から隅まで熱狂が波及していく。ステージとフロアがフルスロットルで駆け抜けたライブは最初から最後まで最高潮であった。

ツアー直前にアイドルフェスで福岡を訪れていたとはいえ、ukkaの福岡単独公演は、2021年3月のZepp Fukuoka公演以来の開催であった。メンバーの突然の脱退に揺れる中での開催となったZepp公演以降、初めてのワンマンライブ、福岡のファンたちの熱い思いは既に爆発寸前だったのであろう。

ステージで特筆すべきは、葵るりさんの力強いパフォーマンスであった。彼女は「恋、いちばんめ」で重要なパートを新たに引き継いでおり、渾身の歌声を叩きつけてくれた。上手いとか下手とかいう基準では測ることのできない、人々の心を動かす力に溢れた歌とダンスだったように思われた。「コロナ禍」の重しから解き放たれた葵るりの快進撃はその後も続く。

3月26日名古屋「盛り上がってるね〜」

仙台、博多と「ワンマンではお久しぶり」の地を巡って大盛況。地元の人の熱烈な歓迎が熱となり、フロア全体に伝染していく様は感動的ですらあった。では、去年もツアーで訪れた名古屋だとどうなのだろうか?待ちわびた日ではなく、特別だけど定期的にくる日ならば。

結果から言うと、この日もライブは大盛況、メンバーも「盛り上がってるね〜」と楽しさを隠せない様子であった。博多のように爆心地があったわけではない。自由で質の高いukkaのライブパフォーマンスに合わせて、フロアでもコールをしたい人はコールする、振りコピをしたい人はする、飛びたい人は飛ぶ、ペンライトを振りたい人は振る…思い思いの楽しみ方をしながら、熱気を高め、フロア全体の熱量がどんどん上がっていく。ステージにもフロアにも自由が溢れていて、そこには楽しさしかない空間が広がっていた。

この日は、結城りなさんのパフォーマンスが印象的であった。軽やかに舞うダンスは華やかで、歌声は力みはないのにパワフル。小さい体に秘めたエネルギーが鮮やかに花開くようなステージングであった。

4月1日「関西魂!」

ukkaがライブをやれば必ず楽しい。3カ所を回ってきて感じたことは、それだった。大阪だって例外ではない。むしろ村星りじゅさんがMCで述べたように「関西魂を感じる、熱いライブ」だった。

ukkaの作る音に合わせてフロアの空気も揺れ、それぞれが自由に、熱量をもって応えていく。頭、身体、空気が揺れ、それが大きな波になってステージに向かい、メンバーも負けじとパフォーマンスで応える。音楽と空気の唸りを感じさせる、そんな日だった。

大阪枚方生まれの村星りじゅさんは、生まれ故郷に帰ってきたということもあってか、高い集中力を保って歌とダンスで魅せ続ける。ロングトーンパートの多かった茜空さんは、遠くまで届くようなスケールの大きなパフォーマンスを見せる。川瀬あやめさんは力強くファンファーレを響かせ、芹澤もあさんは誰よりもステージを楽しみながらポップでキュートな歌声とダンスを披露する。熱い関西魂に負けない、灼熱のステージだった。

ukkaの楽しさ

ステージ上に溢れる楽しさ

ukkaのライブはとても楽しい。その楽しさの一つの源泉は、ステージの自由さにあるように思われる。特にダンスで顕著だが、アドリブを交えながらステージを楽しむ姿は、ライブならではの醍醐味に溢れている。演者が楽しんでいるから、フロアのファンも楽しめる。ステージ上の感情に嘘がないから、フロアにも伝染するのだ。

表現力の高さ

しかし、ただ演者が楽しんでいるだけでは、観客をステージに惹きこむことはできない。曲の世界観を伝える表現力の高さが、観客を没入させるのである。フロアの観客たちは、ステージの表現に集中し、ukkaが提示する世界観に浸る。例えば、ukkaよりも歌が上手い、ダンスが指の角度まで綺麗に揃っている、というアイドルはたくさんいるだろう。しかし、曲の世界観を表現することに関して、ukkaはどのアイドルにも引けを取らない。表現力の高さこそが、ukkaのライブの楽しさのもう一つの源泉なのである。

青春小節

メジャーデビューに際して掲げた「青春小節」というコンセプトは、ukkaのあり方の輪郭を浮かび上がらせるものであった。青春の様々な場面を切り取った楽曲の世界を、短編小説のように表現する。小説の登場人物のように個性豊かなメンバーたちが、楽曲の世界を作り上げるのである。

個性と統一感

ukkaはメンバーの個性を大事にして、それぞれの個性にあった歌い方、踊り方を伸ばしていった。個性が違えば歌い方も踊り方も違う。しかし、バラバラにはならない。同じ楽曲の同じ世界を表現しているため、別々の個性にも統一感が生まれているのである。同じ楽曲の「青春小節」の登場人物として、世界観を共有している。だから、それぞれが個性を追求しながらも、バラバラにならないのである。

ステージとフロアの一体感

各楽曲の世界観を表現力高く描き出すステージは、見るものをその世界に誘う。フロアのファンたちは、ukkaが描き出す世界に没入し、楽しみ、熱狂する。フロアのファンがそれぞれ思い思いに自由に振る舞っても、それぞれがステージとの一体感の中にいられる。そのため、バラバラに動いても、ステージを中心とした磁場の中で、ステージに引き寄せられるようにフロアがまとまってもいるのである。こうして、ステージとフロアが一体になりながら熱気を高め合う、ukkaのライブが完成するのである。

4月16日ツアーファイナル

4月16日(日)にukkaは春ツアーの最終公演を行う。チケットはまだ発売中だ。最高の時間が約束されていると断言できるので、ukkaが少しでも気になっている人は、是非とも足を運んで欲しい。